フィルムの園から４

さっきスーパーで買い物してたら、ふいに
「すいません、納豆ってどこにありますかね？」
という声が聞こえた。
顔を上げると、そこには白いTシャツ姿の冴えない小男が。
周りにいたおばさんやお姉さんたちは一瞬動きを止めて声の主を見たけれど、顔を引きつらせてその場を動こうとしなかった。

もちろん心優しい乙女モモネコは、にこやかな笑顔で、
「納豆は確か...こっちの棚の向こうだったと思いますよ」
と、二列先の棚を案内。
無事納豆発見。

「ありがとうございます。いやぁ、かみさんに逃げられちゃってねぇ...」

...え...

「あっははぁ、そうですか〜」

...とっさに笑ってしまった。
笑っていいのかなこんなとき。笑っていいんだよな？自虐だよな...？　なんか、納豆の場所が分からない様子とセリフから察するに、逃げられたばっかりだよな...。うは...
おっちゃん、何があったかはしらねぇけど、がんばれよ。１人で飯食って、１人で洗濯して、その暮らしがアンタを成長させるよ。うちの親父は母親の負担を軽くするために、掃除と洗濯はするし、こないだは娘から豚の角煮をマスターしたんだぜ。なぁ、人生無駄な事なんてないよ。いつかきっと、素敵な事がアンタに起こるに違いないよ。がんばれよ...。野菜もちゃんと食いなよ。