1日目

■『旅』川本喜八郎作品集 [DVD]

未知の世界への若い女性の旅。川本の好きな蘇東坡の詩「至り得帰り来てみれば別事無し」の映像化。短期の海外旅行から帰国し、出発時と何ら変わらぬ都会の雑踏や混んだ電車に身を置いた時の感慨、自分は随分いろんな事を見聞きし体験して帰ってきたが、周辺の日常には何ら変化がない、自分はこんなに変わったのに。といった違和感をかなり観念的に描いた作品である。(日本パペットアニメーションDVD解説より)

画像があると良かったんだけど、ちょっと見つからなかった。最近の川本さんの人形を使ったパペットアニメーションというよりは、絵や紙を使ったアニメというイメージ。冒頭と最後に、駅のホームの雑踏の中にいる若い女性の写真がスライドのように流れ、その像の上に蘇東坡の詩「至り得帰り来てみれば別事無し・・・」の文字が入る。旅の途中この若い女の人は何回か恐い目に遭います。で、逃げまくり、そのうちにどんどん不思議な世界へ足を踏み入れていってしまう。若い女性にとっての男性への憧れと、同時に恐怖のモチーフが、全体にちりばめられている。

■『火宅』川本喜八郎作品集 [DVD]

 

能の『求塚(もとめづか)』による何の落ち度もない清らかな乙女が地獄に落ちて永遠の火に焼かれる、常識では納得のいかない不条理ドラマ。川本アニメの中では、『道成寺』『鬼』と一緒に不条理3部作と言われる作品の中のひとつである。主役の王朝の乙女を写経に余念のない信仰深い女性にしたあたり既に『死者の書』のヒロインのイメージが出来上がっている。川本アニメの一つの通達点である。(日本パペットアニメーションDVD解説より)

■『くもとちゅうりっぷ』

 

各分野とも戦争色にぬりつぶされ、動画映画界とて例外ではなかった。そうした中で、松竹の政岡は1943年に『くもとちゅうりっぷ』を完成させた。これは文部省推薦図書の『よい子つよい子』に掲載された女流作家、横山美智子の原作を動画化したものである。ストーリーは観客にロマンチックな夢を与える作品であり、政岡好みのテーマであった。政岡はこの作品の脚色、演出、撮影を担当し、技術の枠と芸術性を結集した。そして何よりもこの作品の素晴らしいところは、この作品が戦時中につくられたということである。当時は「黒いクモは南洋の土人、白いてんとう虫は白人。大東亜共栄圏建設の為に原住民との友好を旨としている時に、土人が白人をいじめて滅びる等もってのほか・・・」と。作品の優劣ではなくこういった理由から『くもとちゅうりっぷ』は文部省推薦を得られなかったのである。(配布された資料より)